極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
22話「名前」
22話「名前」
『じゃあ、曲の基本はこれで。後のアレンジとかは畔ちゃんにお任せするね』
『ありがとうございます!やっぱり椿生さんに頼んでよかったです』
椿生が作曲した楽曲の手直しが終わり、畔は彼から出来たばかりの楽譜を受け取った。ここからは畔が頑張る番なのだと気合いが入る。
『畔ちゃん、作詞のために俺が話した芥川龍之介のお話、読んでくれたんでしょ?』
『椿生さんが私を海って呼んでくれた時から、気になって本を買ってました。何だか、こんな名前のせいか海には縁があるみたいです。………海って名前も懐かしいですし……』
畔はその名前の主の事を頭に思い浮かべて、懐かしさから目を細めた。
すると、椿生はその話しが気になったのか、『懐かしいって?』と、手話で質問してきた。
畔は少し迷いつつも、彼ならば話してもかまわないと思い、少し前の思い出話しをする事にした。
『椿生さんが褒めてくれた、「青の音色」って曲がありますよね。あの曲、実は私が作曲したんじゃないんです。私がネット動画を更新していて、まだまだ有名じゃないときに、よくチャットをしてくれてたお友達がいたんですけど……私が曲づくりに迷ってたときに、「こんなのどう?」って送ってくれて。その曲をプレゼントしてくれたのが、「海」という人なんです。会ったこともなくて、曲を貰ってからしばらくすると連絡がとれなくなってしまったんですけど……….。とても良くしてもらった人なので。私なお友達なんです』