極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
23話「夕焼け色の音楽」
23話「夕焼け色の音楽」
hotoRiの騒動は思ったより早くに鎮火した。
hotoRi自身の動画で起こった経緯や本心、そして謝罪に恋人発表。hotoRiの気持ちを受け取ってくれたファンが沢山いたのだ。
それと同時にいきすぎた報道が非難され、報道も少なくなっていったのだ。そのため、hotoRiを祝福するムードや、新曲への期待が高まってきた。
そのため、畔の自宅に報道陣が殺到することもなくなり、そろそろ戻ることも可能になってきた。
けれど、畔はまだ椿生の自宅で過ごしていた。彼と一緒の方が曲作りがしやすいから、という言い訳をしてしまっている自分がいた。
「まだまだ居てくれた方が嬉しいよ」と、椿生も言ってくれているが、少しずつ甘えすぎかな、とも思ってしまう。
椿生が作曲した曲につける歌詞が完成した。
すっかり畔の仕事場になってしまったリビングの大きな窓から真っ赤な夕焼けの光りが入り込んでくる。まだまだ暑い日が続いているが、少しずつ秋に近づいてきており、陽が沈むのも早くなってきた。
畔は窓を見つめながら、畔は頭で彼の曲を再生し、そしてスーっと息を吸った。
そして、出来たばかりの歌詞をのせて歌った。
自分の声は聞こえない。だから、少しの不安はあるが、きっと彼のピアノに合わせれば大丈夫。そんな安心感がある。
そして、「海のほとり」の事を考え作った、別れの先の物語。
それを自分に置き換えるとどうしても切なくなってしまう。
椿生と別れてしまったら、新しい出会いがあると前向きになれるだろうか。笑顔で別れる事が出来るだろうか。自分でも不安になってしまう。だからこそ、この曲を書いた。
それでも別れしかないのなら、笑顔で出会う日を待ちたい。だから、そんな時はあなたにも笑っていて欲しい。
だから、この瞬間が宝物なのだ、と。
畔はhotoRiとして1曲を歌い終えた時、瞳から一粒の涙がこぼれ落ちた。
その涙は真っ赤になっていたのに、畔は気づくことはなく、指で拭う。