仮面夫婦マリアージュ~愛のない一夜でしたが妊娠しました~
私はユニットバスで着替えを済ませた。
カラダの気怠さと下肢の違和感で、私は周防副社長に処女を奪われたんだと悟った。

嫌悪感はなかったけど、私達の間に愛はなかった。
愛はなくても、セックスは簡単に出来てしまうんだと身を持って知った。

「お待たせしました…」

彼もネクタイを締めて昨日と違うチャコールグレーのスーツに身を包む。
眉目秀麗で、『周防ホールディングス』の父親・周防悠真(スオウユウマ)会長に似て端整な顔の彼。
一文字に整った眉、アーモンド形の瞳に高い鼻梁、肉厚の良い唇、どのパーツを見ても美しく男の色艶が見える。


「これ」

彼は踵の修理を終えたヒールを持っていた。
「ありがとうございます」

もう片方のヒールをクローゼットから出していると。

「ついでにコートも出して」
彼の頼まれた。
「あ、はい…」

私はクローゼットのハンガーにかかった彼のトレンチコートも一緒に取り出した。

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