仮面夫婦マリアージュ~愛のない一夜でしたが妊娠しました~
「どうそ」

「サンキュー」
彼はコートを受け取り、スーツの上に羽織った。

「あの…昨日の夜のコトは忘れてください…」

彼はキョトンと私を見つめる。
「だって…周防副社長は酒井さんが盛った媚薬の効果を鎮める為に私と…」

「そうだけど…」

「これは過ちですから…お互いに忘れるコトにしましょう」

「…でも、君は初めてなんだろ?」

「…あれだけ…浮名を流してるクセに…初めてだなんて…可笑しいですよね…」

挙式当日に男と逃げた花嫁。
その事実は一生ついて回る。

酒井さんと結婚しなければともう二度と結婚出来ないと両親には言われたのに。
私は彼との夜を拒否って逃げてしまった。

きっとこの見合い話は破談だ。

「此処で失礼します…」

「工藤さん!?」

私は彼の呼ぶ声を無視して部屋を出た。
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