仮面夫婦マリアージュ～愛のない一夜でしたが妊娠しました～

「あのさ・・・そう真剣に考えないで…」

「え、あ…」
彼の言う結婚は偽装。
「あくまで、結婚しても俺達は仮面夫婦だ」

「・・・ゴメンなさい…」

彼は参ったように足を組みかえ、無造作にセットされた前髪を弄り、黙り込んだ。

「君だって…このまま逃げても…問題の解決にならないと思ってるだろ？」

「はい」

私が家を出ても、父に迷惑を掛けた事実は消えない。寧ろ、余計に迷惑がかかる。

「親孝行する為にも、此処は俺の提案を受け入れた方がいいと思うよ。工藤さん」

「でも・・・貴方なら、私よりも素敵な女性が居ると思いますが」

「・・・いると思うけど…君以外の令嬢にこんな提案は出来ない…喜んで、こんな提案を受け入れるような令嬢は居ないだろ？」

「それもそうですね…」

「・・・ギブ&テイクだ…」

「周防さん…」