仮面夫婦マリアージュ~愛のない一夜でしたが妊娠しました~
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「これは一体…どう言うコトだ?亜優」

「ご挨拶、申し遅れました。工藤社長。亜優さんとは今まで秘密裡に交際していました。酒井衆院議員のご子息との見合い話の件ですが…俺が総理を通し、穏便に致しますので、ご心配なさらず」

「周防副社長と亜優が交際していたのは…事実なんですか?」

「はい、そうですけど…」

「それならそうと…何故…このわしに何も言わないんだ…亜優」

周防さんの突然の訪問に驚きながら、父は眉間にシワを寄せ、彼の説明に耳を傾けた。
でも、彼の丁寧な説明で次第に状況を吞み、表情も緩んでいく。

「申し訳ありません…」

「そう責めないで下さい。口止めをしていたのは俺ですから…でも、亜優もう…俺達の仲を隠す必要はないぞ…」

周防さんは隣に座る私の肩を抱き、引き寄せた。

肩を抱いたかと思えば、その手を直ぐに離して、周防さんはソファを立ちあがり、絨毯の上に土下座をした。

「す、周防副社長!!?」

「・・・工藤社長…亜優さんと結婚させて下さい…」

彼の素速い行動に鈍い頭の持ち主の私の思考は付いていけなかった。

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