仮面夫婦マリアージュ~愛のない一夜でしたが妊娠しました~
彼だけを見つめて…
「周防さんにはいつもお世話になっています」

「・・・亜優…何度言ったら、わかるんだ?」

「すいません…颯真さん…でした」

二人の前では颯真さんと呼んでくれとエレベーターの中で頼まれたけど、ぶっつけ本番で、彼の名前を呼ぶコトは出来なかった。

「亜優はこの通りいつになっても他人行儀だから…困る」

彼は私の椅子を引き、座らせてくれた。
私が座るのを見届けて、隣の椅子に腰を下ろす。

「席が…」

「あ…妹の美穂の分だ…」

「妹?」

「・・・俺の妹は「東亜医科大付属病院』で麻酔科医している」

「へぇー…妹さんはお医者様なんですか…凄いですね」

「全然、凄くないよ…兄の俺には強気だから…困った妹だ」

「す、周防さん…後ろ…」

「後ろ??」

私の声で振り返った周防さんの顔に後から入って来た妹さんのバックが命中した。

「美穂お前…!!?」

「ゴメンなさい…お兄様…痛かった?」

「お前…ワザと俺の顔にバックぶつけた・・・よな」

「ワザとじゃないわよ…ねぇー…お母様」

「・・・二人とも…此処で兄妹喧嘩するのは止めてよね…」

「分かってるわよ。お母様…ねぇー…お兄様」

「・・・後で憶えてろ。美穂」

美穂さんは菜穂夫人の隣に腰を下ろした。

颯真さんに似て、目鼻立ちのはっきりしたモデル並みの美人顔に長身のスタイル。
その上、職業は医者。

美穂さんは誰もが羨むすべてのモノを兼ね備えていた。

「貴方が噂のお嬢様ね…私の持つイメージとは全く別人ね…」







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