仮面夫婦マリアージュ～愛のない一夜でしたが妊娠しました～

私は会計を済ませ、一階の中央受付のソファに腰を下ろして、颯真さんが来るのを待った。

「亜優さんも一人？」

杏南さんも一人だった。
「杏南さんもお一人ですか？」

「俊吾さんは仕事で院長室に行ったわ。仕事のついでに私の検診に付き添っただけなの」
長谷川副社長は相変わらず仕事の鬼だ。

「長谷川副社長はお仕事忙しそうですね…」

「まぁね…国のＩＴシステムに携わっていたかと思えば、今度は東亜のＡＩシステムの仕事で忙しいみたいだし」

「へぇー・・・」

「亜優さんさえ、良ければ…新生児科に行かない？」

「えっ?あ…」
新生児科か…
「槇村先生の奥さんの遥さんが居る所ですよね」

「うん。もしかして…遥さんと面識あるの？」


「はい・・・夫妻で遊びに来ました…」

「そうなんだ…」

杏南さんの複雑な顔に首を傾げた。

「え、あ…何かあるんですか？」
「遥さんって、俊吾さんの高校時代の元カノなの」

「えっ！？全然、知りませんでした…」