僕らの苦い夏の味

幸汰は小学校のときから野球にすべての時間を注ぎ込んできた。

誰から強制されたわけでもない、ただ、本当に野球を楽しんでいた。

朝から晩まで野球のことばかり考えていたせいで、テストの点数は目も当てられないくらい酷いものだったけれど、そのおかげか野球の腕はメキメキ上達していった。

コーチからも一目置かれ続けて、高校は私と同じ、家から少し離れた野球の強いところへ進学した。


そこまでなら、優秀な野球選手として彼のことを語れたのに。


運の悪いことに、幸汰は高校のチームで一番野球が上手かった。

チームメイトから向けられる様々な感情。


尊敬、羨望、嫉妬、憎悪。


メンバーは思っていたより子どもで、抜きんでた才能を持つ幸汰を受け入れることができなかったらしい。