僕らの苦い夏の味
幸汰に麦わら帽子をかぶせて、水筒に麦茶と氷を入れて肩から提げる。
歩くたびにガラガラと鳴る氷のおかげで、道中も涼しく感じた。
風鈴の氷バージョン、みたいな。
「ほんとここらって何もないよね」
「まぁな。山と川と畑があるだけまだマシだろ」
ぶっきらぼうにそう言う声は、泣いていたせいで少しだけ鼻声だ。
自分から離れておいて、天気のいい日には悲しくなるのだと。
もうあの土埃で曇ったグラウンドに立てないことが、幸汰にとってはどれほどつらいことか、私にはよくわかる。
「……」
「なんだよ」
幸汰がしっかり着いてきているかを確認しただけなのに、不機嫌そうな顔をされてしまった。
泣き腫らした顔を見られたくなかったらしく、そのままプイと顔を逸らされる。