僕らの苦い夏の味
「……おい、暑い」
「迷子にでもなられたら困るんだよ。おとなしく私の手握ってて」
「今更迷子になんかなるかよ。お前のばーちゃんの畑なんて学校より行きなれてるし」
「はいはい」
私と同じくらいの背丈の草が、強すぎる太陽の光に照らされて透けて見える。
草の壁に囲まれた私たちの姿は、きっと今、誰からも見えていない。
歩いても歩いても、景色が変わらない。
目的地が見えない。
昔はこれが怖くて、畑に行くときは必ず幸汰についてきてもらっていた。
大丈夫だから、おれがいるから。
そういう幸汰の声がかすかに震えていたのを私は知っている。
きっと、お互いに守りあっていたんだ。