僕らの苦い夏の味
幸汰の顔を見上げると、頬が赤く染まっていた。
トマトみたい。
好きなものも嫌いなものも、全部バレている。
野球が好きなことも、トマトが好きなことも、今まで泣いていたことも。
ばあちゃんには何もかもお見通しなんだ。
「ははっ、なんだよーばあちゃん! 俺がトマトしか好きじゃないとでも思ってんのかー? キュウリももらっていくよ!」
「どうぞ。ばあちゃんだけじゃ食べきれんからね」
ぱっと手が離れて、さっきまで足取りが重かった幸汰がズンズンと畑へ入っていく。
私は収穫する幸汰を眺めるべく、トマトが植わっている畝のところにしゃがみこんだ。
「……なんだよ」
「元気出た?」
悔しそうに口元をゆがめて、「うん」と小さく頷く幸汰。