僕らの苦い夏の味

「俺、将来の夢は野球選手だったんだ」


ぱちん、ぱちん、とつやのいいトマトを収穫しながら、ぼそりとつぶやいた。


「あいつらの気持ちもわかるよ。自分より上手いやつがいたらムカつくし、どうにか蹴落としてやりたいと思う」

「でも、やりかたが違うじゃん。卑怯な手を使って蹴落とすんじゃなくて、自分で努力して相手に勝たなきゃ」

「そうだな。はるかの言う通りだよ。けど、俺の引っ張り方も何か悪かったのかもしれねぇから、誰が悪いとは言わない。俺はきっと、このまま野球を続けたらダメだって、神様にいわれたんだ」


そんなわけない。

神様は幸汰に野球をしてほしくて、その才能を与えたんだ。

あるかもわからない大きな力のせいだと諦める幸汰が、幸汰らしくなくて、私は口を噤んでしまった。
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