青い夏で、 私は。
シュンの背中が見えなくなってから、頬に透明な液体がつたった。
ぼろぼろと目から零れる。
それが涙だと気づくのに時間はいらなかった。
ーこうなるって、わかってたのに。
泣く理由なんかないのに。
泣いても、誰もこの涙の存在を知らないのに。
私の意思に関係なく心は青に染まっていく。
流れる涙も、額をながれる汗も、全部青色。
悲しい色。
寂しい色。
でも、それ以上に切なくて苦しい色。
ー私はこの色の理由を知っている。
知っているから苦しかった。
そして海に飛び込む。
制服が濡れるのなんか気にしなかった。
早くこの青さに浸かりたい。
この海の青さに。
見渡す限り、すべてが青の海に。
浸かれば、こんな思いも流れていくと思った。
海に浸かれば。
私の心の青も、涙の青も、全部海のせいにできる。
この青さはきっと海のせい。
シュンとの思い出がある、この海のせい。
そして、私たちが出会った夏のせい。
そう思ったのに海に体を預けても、私の青さは変わらなかった。
ーいや、この青さは。
この海に来たときから、ずっと私は青色だったのかもしれない。
シュンと出会った夏に、この青い海を見たときから。
だから、私の青さは海に浸かるとちょうどいい。
私の青さは海のせい。
ーそして、この青い夏のせい。