トライアングル・ビーチ
帆奈(はんな)、海行くよ海」
その情報をもたらしたのは、親友の由良(ゆら)だった。
「例によってA組がね、海合コンやろうって」
「えっ」
「B組かC組から女子集めて10対10くらいになるように調整してって」
学級日誌から顔を上げたわたしに、由良は微笑んだ。
「佐治くん、来るらしいよ。あと(たちばな)まゆきも」

橘まゆき。
その名前を聞いた瞬間、わたしは落ち着きをなくした。

佐治くん、わたし、そして橘まゆきは、1年生のとき同級生だった。
じゃんけんで負けて、3人で学祭の打ち上げの店を決める係になった。密に連絡を取り合い、共に雑事に追われているうちに連帯感が生まれ、親密になった。
3人きりで「打ち上げの打ち上げ」もした。

あれは人生で初めて感じた、青春のきらめきというやつだった。
化学部で、痩せ型で、ちょっと天然系の佐治くん。学級委員長のわたし。セクシーキャラのまゆき。
ごくごく自然な流れで、生まれるべくして恋は生まれた。
わたしは、佐治くんに。
そしてまゆきも、佐治くんに。
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