トライアングル・ビーチ
個人フリマアプリの「購入する」ボタンを押す指先が震えた。
やりすぎない程度にセクシーなそのブランド水着には、中古でも5桁の値段が付いていた。
けれど、迷ったのは一瞬だった。ひと目でこれだ、とピンときてしまった。わたしはファーストインプレッションを信じるたちなのだ。
バイトで貯めたお金もあったし、17歳の夏に「ちょっとばかり派手な水着」は必要不可欠なアイテムに思えた。

それに――情報通の由良によれば、「佐治くんって普通にセクシー系が好きらしいよ」とのことなのだ。合コンの幹事でもある成田《なりた》くんから聞いたらしい。
まゆきにあって、わたしにないもの。それは色気というやつだ。
彼女に本気を出されたら、わたしに勝ち目はない。

この水着が戦闘服であり、御守りでもあるような気がした。
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