トライアングル・ビーチ
ビーチには夏本番のぬるい風が吹いていて、水面はきらきらと輝き、浮ついた空気がわたしたちを包んでいた。
右耳の下に寄せて垂らした髪の毛に、たちまち潮のにおいが絡みつく。

気合いを入れすぎてうっかりA組男子より先に到着してしまったわたしたちB組女子4人が、集合場所の海の家の前で所在なく佇んでいると、由良のスマホが着信した。
「はいはい。あたしたちもう着いてまーす。……あ、まじで? あっ来た来たおーいっ」
由良がポニーテールを揺らしながらぶんぶん手を振るその先に、ひとかたまりでやってくる男の子たちがいた。
色素の薄い佐治くんの髪の毛は、遠目にもわかった。

ビールパラソルの下でTシャツを脱ぐ瞬間がいちばん緊張する。
他の女子たちはもう日焼け止めの塗り合いっこを始めているのに、自意識過剰なわたしは最後までぐずぐずしていた。

「橘まゆきが来る前がチャンスだよ帆奈、先に印象づけちゃえ」
露出の少ないタンキニを着た由良が、ビーチボールを膨らませながら耳打ちしてきた。
「思いきって買ったんでしょ、ビキニ」
「う、うん」
えいっ。意を決してTシャツを抜ぎ、スカートも脱いで水着姿になる。陽射しが素肌に突き刺さる。心許なさと、何かが吹っ切れた快感が両立している。
隣りのパラソルの男子たちから投げかけられる視線を、文字通り肌で感じた。
< 6 / 13 >

この作品をシェア

pagetop