溢れる想いを青に込めて。
あの時の私の絶望。
その気持ちを味わったリツは、歯を食いしばり今にも泣きそうな顔をしていた。
私にはその思いが痛いほどよく分かる。
この差を見ると、泳ぎたいという気持ちが一気に、泳ぐのが怖いという気持ちに変わってしまう。
そして、泳ぐたびにこの差を思い出し、またあの時のようになるのが怖い、という気持ちになって心を縛り付ける。
リツはスランプ状態でさらにその上にこの3秒という差がついてしまった今、リツの精神状態はもう崩壊寸前だろう。
そう考えるといてもたってもいられなくて、勢いよく立ち上がる。
「カナちん、、、行くの?」
ラナの心配そうな声に、うん、と短く返事をしてプールの裏に向かった。
―SCの頃、リツはタイムが思うようにいかないと、よく裏で泣いていた。
それは私だけが知っている秘密で、2人だけの秘密だった。
だから、そこにいると確信していた。
裏に行くと、見慣れた黒髪と大きな背中を見つけた。
「リツ。」
私の声にビクッと反応を見せてからこちらに振り返ったリツは今にも消えてしまいそうに見えた。
「カナ、、俺。辛いよ」
そう呟くように言って、私の肩に頭を乗せた。
私より一回り大きい体が、やけに小さく感じた。
そして、リツの言葉がまた、あの頃のことを連想させた。
「ごめんね」
そう一言いい、リツの頭を優しく撫でる。
―分かってる。
リツと、水泳と、きちんとケジメをつけなきゃいけないってこと。