溢れる想いを青に込めて。
「なっ、何笑ってんだよっ」
リツは恥ずかしさを隠すように手で顔を覆う。
そして、深呼吸をした後
「水泳で世界を目指すー!!!」
と叫んだ。
リツの夢を初めて聞いて、今度はこっちが固まる番だった。
「世界、、?」
ああ、と力強く頷いたリツは、遠い彼方を見つめているようだった。
「カナを世界に連れてくのも俺の夢だ」
リツがこちらを向いて、目がしっかりと合った。
「カナが望むなら、俺は俺のために泳ぐ。でも、こうしてカナが前に進んでくれたから。俺も前に進みたい。だから俺はお前のために泳ぐ。」
リツからは信じられない言葉が出てきた。
私の、ため?
混乱した頭を抱えながら飛び台に腰掛ける。
するとリツも飛び台の上に乗り、スタートの姿勢をとった。
そして飛び台から足を離しながら綺麗な弧をえがく。
その飛び込みからリツは本気なんだ、と悟る。
リツが私のために泳ぐ、こんなに素敵なことは無いだろう。
私に必要なのは、水泳と、リツだけだから。
リツは水から顔を出して、無言で拳をつきだす。
そんなリツを見て、かなわないなぁ、思いながら私も拳をつきだした。