溢れる想いを青に込めて。
私とリツが出会ったのは中学1年の頃。
私が通っていた小学校と中学校には水泳部がなかったため、小さい頃から当たり前のように海晴SC(スイミングクラブ)で泳いでいた。
そこにリツが転入してきて、私たちは出会った。
リツと初めて会った時、リツはとても興奮した様子で
「泳ぎ、ちょーきれいだな!!」
と私の泳ぎを褒めてくれた。
私もその頃は水泳が大好きで、水泳が私の全てだったからほんとに嬉しかったのを今でも覚えている。
「俺は、青井 立夏!前は波雲SCにいた!よろしく!」
「私、七瀬 叶波!」
それから私たちは毎日一緒に泳いで、お互いに刺激を受けながら成長していった。
2人でタイムを競い合い、時には褒め合いながら泳ぎ続けた。
リツとはよく、泳いだ後お互いの泳ぎの改善点を話し合っていた。
2人とも泳ぐことが大好きで、その気持ちを疑ったりはしなかった。
リツと泳ぐ時間はとても幸せで、何より、リツの水泳が大好きでたまらない、という想いが伝わってくる豪快な泳ぎを見るのが好きだった。
―でも、中学3年生になった時のタイム測定で、私とリツの関係が一気に崩れるような出来事が起きた。
いつものようにタイムを測り、リツと結果を報告しあった時。
「俺、1.10.26だぜ!自己ベスト更新!」
リツは目を輝かせて、興奮気味に言った。
でも、私はそのタイムを聞いて絶望しかなかった。
「わ、私、、1.12.35、、」
私とリツには1秒以上の差があった。
目の前が一気に真っ暗になった気がした。
水泳では、わずか0.1秒でも大きな違いになってくる厳しい世界だ。
それは十分に理解していた。
しているつもりだった。
だからこそ、ここにきての1秒という差はとても重く心にのしかかった。
ショックだった。
ここまで、ずっと一緒に泳いできたのに、こんな形で呆気なく崩れてしまうことが。
私とリツとの間にはとても大きくて、超えることの出来ない壁ができた気がした。
男女の差だと、一言で言えばそうかもしれない。
リツは男の子で、身長も私より10センチ高い。
それだけの差だと、快く受け入れられていたら、どんなに良かっただろう。
水泳が人生の全てだった私にとって、この差は水泳を辞める、十分すぎる理由になった。
「そ、そっか、、」
リツが気まずそうに言葉をこぼす。
頬に流れる透明な液体が、涙だと気づくのに時間はいらなかった。
いつものリツなら私に勝ったことに喜んでいたかもしれない。
でも、泣いている私を見て、そういう状況ではないことを悟ったらしかった。
「でも、さ、また次あるし!そんときは、頑張ろうぜ!」
そう言って慰めるように私の頭に手を置こうとした。
でも、私にはその行為さえも辛く感じて、手を振り払ってしまった。
一瞬のことに、目を見開いて驚くリツの顔が瞳に映った。
そして、苦しそうな、今にも泣きそうな顔をした。
リツがそんな顔する必要ないのに、と涙をボロボロ零しながら思った。
私が通っていた小学校と中学校には水泳部がなかったため、小さい頃から当たり前のように海晴SC(スイミングクラブ)で泳いでいた。
そこにリツが転入してきて、私たちは出会った。
リツと初めて会った時、リツはとても興奮した様子で
「泳ぎ、ちょーきれいだな!!」
と私の泳ぎを褒めてくれた。
私もその頃は水泳が大好きで、水泳が私の全てだったからほんとに嬉しかったのを今でも覚えている。
「俺は、青井 立夏!前は波雲SCにいた!よろしく!」
「私、七瀬 叶波!」
それから私たちは毎日一緒に泳いで、お互いに刺激を受けながら成長していった。
2人でタイムを競い合い、時には褒め合いながら泳ぎ続けた。
リツとはよく、泳いだ後お互いの泳ぎの改善点を話し合っていた。
2人とも泳ぐことが大好きで、その気持ちを疑ったりはしなかった。
リツと泳ぐ時間はとても幸せで、何より、リツの水泳が大好きでたまらない、という想いが伝わってくる豪快な泳ぎを見るのが好きだった。
―でも、中学3年生になった時のタイム測定で、私とリツの関係が一気に崩れるような出来事が起きた。
いつものようにタイムを測り、リツと結果を報告しあった時。
「俺、1.10.26だぜ!自己ベスト更新!」
リツは目を輝かせて、興奮気味に言った。
でも、私はそのタイムを聞いて絶望しかなかった。
「わ、私、、1.12.35、、」
私とリツには1秒以上の差があった。
目の前が一気に真っ暗になった気がした。
水泳では、わずか0.1秒でも大きな違いになってくる厳しい世界だ。
それは十分に理解していた。
しているつもりだった。
だからこそ、ここにきての1秒という差はとても重く心にのしかかった。
ショックだった。
ここまで、ずっと一緒に泳いできたのに、こんな形で呆気なく崩れてしまうことが。
私とリツとの間にはとても大きくて、超えることの出来ない壁ができた気がした。
男女の差だと、一言で言えばそうかもしれない。
リツは男の子で、身長も私より10センチ高い。
それだけの差だと、快く受け入れられていたら、どんなに良かっただろう。
水泳が人生の全てだった私にとって、この差は水泳を辞める、十分すぎる理由になった。
「そ、そっか、、」
リツが気まずそうに言葉をこぼす。
頬に流れる透明な液体が、涙だと気づくのに時間はいらなかった。
いつものリツなら私に勝ったことに喜んでいたかもしれない。
でも、泣いている私を見て、そういう状況ではないことを悟ったらしかった。
「でも、さ、また次あるし!そんときは、頑張ろうぜ!」
そう言って慰めるように私の頭に手を置こうとした。
でも、私にはその行為さえも辛く感じて、手を振り払ってしまった。
一瞬のことに、目を見開いて驚くリツの顔が瞳に映った。
そして、苦しそうな、今にも泣きそうな顔をした。
リツがそんな顔する必要ないのに、と涙をボロボロ零しながら思った。