溢れる想いを青に込めて。

―そして待ちに待った月曜の放課後。

少し慣れない手でバックを持ち、プールの更衣室に向かう。

私が持っているバックにはしっかりとイルカのストラップがついていた。

「紹介する。1年の七瀬叶波さんだ。経験者だそうなので4コースで泳いでもらう。」

と、部長からの紹介を受けて

「よろしくお願いいたします」

と頭を下げた。

すると部員の人達があたたかい拍手をくれた。

リツもニカッと笑ってこっちにブイサインをしてきた。

呆れた顔でリツをみていると、隣に若葉が来て私に拳を向けた。

「お前ら、前に進んだみたいだな。ま、俺の足を引っ張らないように頑張れよ」

と、憎たらしい言葉を述べた。

少しムカッとしながらも拳を突き合わせて、

「そっちこそ」

と言ってべーと舌を出した。

「何やってんの。早く行くぞ、カナ。」

と私の腕を引っ張りながらリツが言った。

「何、嫉妬か?」

と若葉がにやにやしながら言うと

「ちげーよっ」

と吠えるように言い、4コースに向かう。

そう言えばリツは4コースだって言ってたっけ。

同じなのか、と少し口元を緩める。

「じゃ、七瀬さん。タイム測定です。」

と4コースにつくか否、部長が言う。

「青井君から速いとは聞いていますが、うちの水泳部はタイム順ですからね。専門の100でお願いします。」

と言われ、早くプールに入るように促された。

タイム測定、という言葉に胸が高鳴る。

久しぶりだな、というのが正直な感想だった。

リツが無言で私の背中を押す。

よし、と心を決めてスタートの姿勢をとった。




笛の音が聞こえた瞬間、懐かしい水の中に潜る。

ああ、この感覚。

水が体の一部になったような心地よい感覚。

それを肌で感じながら、手で水をかく。

クイックターンをした後の空の青さはとても目に焼きついた。

ラスト25メートル。

リツの

「カナっ」

という声がかすかに聞こえ、力強く水を蹴る。

全ての水が私の味方になったように周りに押し寄せる。

あの頃で途切れていた、私の泳ぎが少しずつ取り戻されていく。

そして、大きくひとかきした時に手が壁についた。

< 24 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop