溢れる想いを青に込めて。
「タイムはっ!?」
リツと声が重なる。
部長は驚いて苦笑しながら
「1.10.36だよ」
と言った。
―それはあの頃の私のタイムよりも速い記録だった。
その事に驚き、リツの顔を見る。
リツも驚いた顔をしていたが、すぐに満面の笑みになって私に拳をつきだした。
私も言葉にできない嬉しさを胸に拳を合わせた。
「やっぱり速いね、七瀬さん。じゃあ、これからは4コースで頑張ろう」
と部長がいい、はいっと大きな返事をした。
そして水筒を取りお茶を飲んでいるとリツがあの頃のように目を輝やかせて言った。
「やっぱカナすげーよ!こんなにも水と一体化した綺麗な泳ぎ、カナしか出来ねぇ!」
その勢いにビックリしつつ、
「リツこそ、その純粋で豪快な泳ぎはリツしか出来ないよ」
と笑って言った。
あの頃は数え切れないほどお互いの泳ぎのいい所を言っていた。
それを思い出してなんだか懐かしく思えた。
4コースには私とリツの他に3年男子の高峰先輩と2年男女の双子の清水那桜・莉桜先輩がいた。
皆優しそうでほっとする。
「っしゃ!泳ごーぜ!カナ」
リツはとても待ちきれないといった様子で、手やら足やらを回している。
リツってば子供みたい、と思いながらプールに浸かる。
「はい、アップ始め!」
部長の声を合図に部員がいっせいに泳ぎ始めた。