溢れる想いを青に込めて。

―部活後。リツに声をかけられて、途中の駅まで一緒に帰ることになった。

「やっぱ楽しいな!カナと泳ぐの」

と、リツが嬉しそうに言った。

「リツ、、」












「なんでここに若葉がいるわけ!?」

少し後ろを歩く若葉を、横目で見ながら言う。

「別にいいだろ?てか、元々俺は青井と帰ってたんだよ。な、青井」

と、リツの肩に手をかけながら言った。

するとリツは

「お前が勝手に付いてきてただけだろ」

と、わざとらしくため息をついた。

「ていうか、俺カナと話すことあるんだけど」

というので、なんだろう、と首を傾げていると

「わーったよ。じゃ、また部活でな」

と、若葉が軽く手を振りながら遠ざかって言った。

嵐のように去るやつだな、ともう誰もいないななめ後ろを見つめながら思っていると

「カナ。」

ふいに歩みをとめてこちらに顔を向ける。

「俺、ほんとにカナがいてくれて良かったって思ってる。いてくれなかったら、前に進めなかった。」

リツが真剣な目で私を見る。

そしてまた口を開いて、言葉を続けた。

「俺の夢、覚えてるか?」

珍しく不安げな眼差しをしていた。

「うん。ちゃんと覚えてるよ」

そういうと、リツは力が抜けたように優しく笑った。

―忘れるわけない。

リツが初めて私に口にした夢。

世界にいく、という大きな夢。

まだ高校生の私たちには大きすぎる夢かもしれない。

けれど、リツならできる、そんな気がしていた。

「俺、カナの泳ぎ見てなかったら、ここまで水泳続けてなかったと思う。ほんと、全部カナのおかげなんだ。だから。あの頃、カナが俺に勇気をくれたみたいに。世界中の人を俺の泳ぎで元気づけれたらいいなって思うんだ」

リツらしい理由だと思った。

どんなときも負けず嫌いで、でも他の人のことをほっとけなくて。

そんなリツだからこそ、絶対に叶えれると思ったし、叶えて欲しいと思った。

「大丈夫だよ、リツ。」

リツの頭をぐしゃっと撫でる。

リツの髪の毛はまだ少し水が滴っていた。

「私がそばにいるじゃない。」


そうはにかむと、

「だよな」

と、リツも笑って言った。


< 27 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop