溢れる想いを青に込めて。
―部活後。リツに声をかけられて、途中の駅まで一緒に帰ることになった。
「やっぱ楽しいな!カナと泳ぐの」
と、リツが嬉しそうに言った。
「リツ、、」
「なんでここに若葉がいるわけ!?」
少し後ろを歩く若葉を、横目で見ながら言う。
「別にいいだろ?てか、元々俺は青井と帰ってたんだよ。な、青井」
と、リツの肩に手をかけながら言った。
するとリツは
「お前が勝手に付いてきてただけだろ」
と、わざとらしくため息をついた。
「ていうか、俺カナと話すことあるんだけど」
というので、なんだろう、と首を傾げていると
「わーったよ。じゃ、また部活でな」
と、若葉が軽く手を振りながら遠ざかって言った。
嵐のように去るやつだな、ともう誰もいないななめ後ろを見つめながら思っていると
「カナ。」
ふいに歩みをとめてこちらに顔を向ける。
「俺、ほんとにカナがいてくれて良かったって思ってる。いてくれなかったら、前に進めなかった。」
リツが真剣な目で私を見る。
そしてまた口を開いて、言葉を続けた。
「俺の夢、覚えてるか?」
珍しく不安げな眼差しをしていた。
「うん。ちゃんと覚えてるよ」
そういうと、リツは力が抜けたように優しく笑った。
―忘れるわけない。
リツが初めて私に口にした夢。
世界にいく、という大きな夢。
まだ高校生の私たちには大きすぎる夢かもしれない。
けれど、リツならできる、そんな気がしていた。
「俺、カナの泳ぎ見てなかったら、ここまで水泳続けてなかったと思う。ほんと、全部カナのおかげなんだ。だから。あの頃、カナが俺に勇気をくれたみたいに。世界中の人を俺の泳ぎで元気づけれたらいいなって思うんだ」
リツらしい理由だと思った。
どんなときも負けず嫌いで、でも他の人のことをほっとけなくて。
そんなリツだからこそ、絶対に叶えれると思ったし、叶えて欲しいと思った。
「大丈夫だよ、リツ。」
リツの頭をぐしゃっと撫でる。
リツの髪の毛はまだ少し水が滴っていた。
「私がそばにいるじゃない。」
そうはにかむと、
「だよな」
と、リツも笑って言った。