溢れる想いを青に込めて。
―私はずっとリツのそばにいるよ。
私には水泳とリツが全てだもの。
リツが私に手を伸ばしてくれたから、その手をとることが出来た。
水泳へ戻ることが出来た。
だから、ずっとリツの隣で泳ぐよ。
水泳をすることで、リツの隣にいることで、私の心が満たされていくから。
「ねえ、リツ」
そう呼べば、ん?って笑って答えてくれる。
「私、信じてるよ」
リツが私の事を必要とするなら、ずっと隣にいるから。
私が泳ぐことで少しでも勇気をもらっているなら、私はいつまでも泳ぎ続けるから。
だから、リツ。
私に向けてくれたその手を、世界に差し伸ばしてほしい。
なにより自分を信じて、上を目指して欲しい。
でもちょっぴり欲を言うなら、その手が世界を掴んだ時、隣にいるのが私であって欲しい。
私たちはずっと2人で水泳をしてきたから。
「おう」
私に向けられたリツの笑顔が、心をもっと満たしていく。
その短い返事でも、私たちの心を通わすには十分だった。
「じゃ、またね」
そういってリツと別れる。
夕方の絶妙な色合いに優しさを感じつつ、家へと足を向かわせていると
「叶波?」
という声がした。
振り返るとそこには、私服姿の、ゆうちゃんがいた。
「昨日ぶりだね。こんな時間まで学校?」
と、制服姿の私を見ながら言った。
「実はね、、、水泳部に入ったんだ」
ゆうちゃんの目が見開かれる。
驚いているゆうちゃんを見て苦笑した。
水泳部に入ったということは、私がもう一度水泳をやるということだから。
今までの私だったら水泳をもう一度やる、なんて思うこともなかっただろう。
―全部リツのおかげだ。
「そっか。なんだか叶波、いきいきしてるね。なんかいいことあった?」
ゆうちゃんは鋭い。
内心焦りつつ
「何も無いよ。でも強いて言うなら、、、信じてるんだ。」
そう私が言うと、ゆうちゃんは意味がわからなくて首を傾げていた。
そんなゆうちゃんを見て、くすっと笑みがもれた。
「次会うのは、地区大会だね」
目線を上にあげながら言う。
「だね。負けないよ、叶波たちには」
ゆうちゃんが不敵な笑みをこぼす。
たち、というのはきっと私とリツのこと。
「勝つのはこっちだよ」
私も口角を上げて言った。