溢れる想いを青に込めて。
―そして、私は水泳をやめた。

リツとは中学が違うため、それ以来会うことはなかった。

水泳をやめて、リツと離れて、私の心は空っぽになった。

私の全てを、私自身で否定してしまった。

その事がとても辛かった。



でもふとした時に、水泳の事を、リツの事を考えている自分がいた。

リツはまだ、泳いでいるのかな。

ベスト出してるかな。

気づけば、そんなことばかり考えていた。

水泳はもう、やれない。

そう心では思っていてもあの煌めく水と鼻をくすぶる塩素の匂いを思いだしては、1人で泣いていた。

心はずっと暗闇の中だった。

リツと離れてから埋めることが出来ない穴があいた気がして、でもそれを言葉にするのがこわくてずっと水泳からも、リツからも逃げていた。

リツは私の泳ぎが好きで、私はリツの泳ぎが好きでお互いがお互いを尊敬し合ってて、だから、その関係に私は安心しきっていたのかもしれない。

―こんなにも、簡単に崩れるものだと知らずに。

もしあの時、私の心がもっと強くて、あの壁を超えれていれば完全に崩れることはなかったかもしれない。

でも、あの壁を前にして私の弱い心は壁を超えることを拒んだ。

そして、水泳から、リツから逃げた。


―それから1年後、私とリツは海晴高校に進学した。

すると、幸か不幸か同じクラスになってしまった。

久しぶりに見たリツはあの頃より20センチも高くなっていて、綺麗な逆三角形の筋肉がついていた。

同じクラスなのに、私とリツには1年間という長くて短い心の距離があり、言葉を交わせずにいた。

しかし時折目が合うと、あの時と同じ苦しそうな目で私を見ていた。

そんなリツを見るのが嫌で、私はいつも先に目を逸らしてしまう。

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