溢れる想いを青に込めて。
「カナ」
3時間の部活を終えて片付けをしていると、後ろからリツの声がした。
「タイム、測ってよ」
あの頃と同じやる気に満ちた笑顔でそういった。
―その笑顔で言われると断れない。
私が好きなリツの笑顔。
その笑顔は私だけに向けられるものだから。
あの頃もその笑顔に負けて、リツのおねだりをよく聞いていた。
しかたないなぁ、と思いつつタイマーを手に持つ。
いつの間にか周りにいた他の部員はいなくなっていて、プールには私とリツだけだった。
リツが飛び台の上で綺麗なフォームをとる。
「ピーーッ」
私の口からでた音を合図に綺麗に弧をえがく。
リツの泳ぎにもう迷いはなかった。
水の中、ただ一直線に、夢に向かって泳いでいる気がした。
その泳ぎを見て、あの頃の感覚を思い出す。
あの頃も変わらずリツの泳ぎが大好きだった。
ただひたすらに綺麗で、豪快で、リツらしい、と思った。
残り25メートル。
どんどん近づいてくるリツは、先程よりも更に力強さを増していた。
飛び台の横でタイマーをかまえる。
秒数が0.1、0.2、、と進んでいく。
ダンッと勢いよく壁にタッチしたのと同時にボタンを押す。