溢れる想いを青に込めて。
「タイムは、、、1.02.17!」
私が高々と言うと、リツは拳を水面に勢いよくぶつけて
「っしゃぁ!!」
と大きな声で言った。
このタイムは、地区大会の大会記録とわずか0.2秒差。
これなら決勝進出も確実だし、もしかしたら県大会に進めるかもしれない。
そう考えるとほんとにリツは相当な努力してきたんだな、と改めて実感する。
ここ1ヶ月のリツは、あの合同記録会の時の辛そうな泳ぎから抜け出して、いつもの泳ぎを取り戻していた。
あの純粋で豪快な泳ぎで泳ぐリツは、とても楽しそうだった。
それを見て、リツが頑張っているんだから私も頑張らないと、と心の中で決意をする。
そしてまだ水の中にいるリツに手を伸ばした。
「お疲れ様」
リツが私の手をしっかりと握ったので引き上げようとすると、思いっきりプール側に引っ張られた。
私はバランスを崩してプールに落ちる。
一気に視界が泡だらけになり、青くて透き通った水が私を囲む。
「ぷはっ!」
水面から勢いよく顔を出す。
隣でリツも顔を出していた。
一言文句を言ってやろうと思ったが、リツがあまりにも笑顔だったので、その気も失せて言葉にできずにため息としてこぼれる。
リツは水に体をあずけて浮かんでいた。
私も真似して隣に浮かぶ。
するとリツは手を青空に伸ばして、太陽を掴み取るようにぐっ、と握った。
「いよいよだな、地区大会」
―本当に1ヶ月はあっという間だった。
あんなにも笑いあって、悔しがって、励まし合いながら過ごした日々は、もう終わりを告げようとしている。
高峰先輩がある時
「夢を掴めるのはごく一部の人間だけだ」
と、そう言っていた。
「夢を掴むためには自分を犠牲にする覚悟がないといけない、、、その夢が叶わなくても、掴めなくても。俺たちは常に、自分の命を代償にして泳ぐ必要があるんだ。」
そう悲しそうな、辛そうな
それでも、真っ直ぐな目で言っていた。
「俺のひとかきには命が懸かってるんだ。夢も、将来も。ぜんぶ。だからこんな所で終われない」