溢れる想いを青に込めて。
―高峰先輩は、これをどういう気持ちで言ったのだろう。
この大会は自分の夢を、将来を、
決断するための最後のチャンスなのかもしれない。
だけど。
先輩が自分の命を代償にしても、叶わないものがあるのだろうか。
もしそんなものがあったなら、私はどう向き合うのだろう。
リツは、どう向き合うのだろう。
それに向き合う時、リツは隣で笑ってくれているだろうか。
遠そうで、近い将来がいつの間にか目の前に迫っていた。
―私は、泳ぎ続けたい。
泳ぐことは、私の全てだから。
泳ぐことは、リツとの繋がりだから。
もし、水泳が私を必要としていなくても、私が水泳を、リツを必要としているから。
終わる、なんてそんなことしたくない。
―様々な感情が胸の中に溢れている。
でもきっと、高峰先輩は―――――
進路という鎖に捕まって、
泳ぎたいのに、泳げない。
だから必死にもがいている。
誰かに、親に、そして自分に、
自分の居場所を証明したい。
そのために自分の命を代償にする。
そんな思いを持っているように感じた。
「本当に、いよいよ。」
言葉を噛みしめるように言う。
頭の中では高峰先輩の言葉が渦巻いていて、咄嗟にでた声は掠れていた。
―まだこれからのことなんか、誰にも分からない。
だからこそ、進まなきゃ行けない。
この先に。
―空で輝く太陽が、とても眩しかった。
「リツ。絶対勝つよ」
力強い声で言う。
この思いはきっと伝わっているから。
勝ちたい、じゃなくて。
勝つんだ。
他でなく私たちが。
「おう」
リツの声は空の青に吸い込まれていった。