溢れる想いを青に込めて。
ピーッ
浜辺先輩の笛の音で水に飛びこむ。
アップは20分しかない。
限られた時間で、いかに自分の泳ぎを最大限出来るようになるかが重要だ。
まずはここの水になれることも必要だし、壁の滑り具合だとか、ターンの位置確認だとかも必要だ。
とにかくいつもの「自分」の泳ぎをしないと結果はついてこない。
考え事なんかしてる暇はない。
頭の中で邪魔な思念を振り払い、ひとかきひとかきに集中する。
―水を体全体で受け入れるような感覚。
何にも抗わずに、ただ呼吸をするように、水と一体化する感覚。
手が水の中を綺麗にすべり着々と前に進む感覚。
これが私の泳ぎ。
七瀬 叶波の泳ぎ。
大丈夫、私ならここにいる。
私は泳げる。
うん、大丈夫。
何本か泳いで感覚を掴む。
大丈夫、と手を握りしめながら呟く。
アップが終わってからは、誰一人として喋らず皆硬い表情をしていた。
そして部長の指示を受けて観覧席に移動する。