溢れる想いを青に込めて。

ピーッ

浜辺先輩の笛の音で水に飛びこむ。

アップは20分しかない。

限られた時間で、いかに自分の泳ぎを最大限出来るようになるかが重要だ。

まずはここの水になれることも必要だし、壁の滑り具合だとか、ターンの位置確認だとかも必要だ。

とにかくいつもの「自分」の泳ぎをしないと結果はついてこない。

考え事なんかしてる暇はない。

頭の中で邪魔な思念を振り払い、ひとかきひとかきに集中する。





―水を体全体で受け入れるような感覚。

何にも抗わずに、ただ呼吸をするように、水と一体化する感覚。

手が水の中を綺麗にすべり着々と前に進む感覚。



これが私の泳ぎ。

七瀬 叶波の泳ぎ。

大丈夫、私ならここにいる。

私は泳げる。

うん、大丈夫。



何本か泳いで感覚を掴む。

大丈夫、と手を握りしめながら呟く。

アップが終わってからは、誰一人として喋らず皆硬い表情をしていた。


そして部長の指示を受けて観覧席に移動する。
< 36 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop