溢れる想いを青に込めて。
「カナちん!何ぼーっとしてんの」
という、親友の北川蘭奈の声にはっと意識を戻した。
「ごめん、ラナ。考え事しててさ」
「最近、考え事多いよね。やっぱ、、水泳関係?」
2人並んで歩きながら、ラナは気まずそうに聞いてきた。
ラナは小学校からの親友で私が水泳をやめたことも、リツのことも全部知っている。
「ん、まぁ、そんなとこかな」
と、曖昧な返事をして歩くスピードを速めた。
ラナはイマイチという顔をしていたが、深くはつっこんでこなかった。
その優しさが心地よくて、また少し泣きそうになった。
「ところでさ、あれ聞いてくれた?」
泣きそうになったことを隠すようにラナに話題をふった。
「青井のようすのことでしょ?カイくんに聞いたよ」
カイくんというのは若葉 快人というラナの彼氏で、リツと同じ水泳部に所属している。
「青井、調子悪いみたいであんまタイム上がってないみたい。レギュラー入りも難しいかもって。」
この言葉を聞いて、ああ、やっぱりと思った。
リツが不調なのは、多分私が水泳をやめてから。
中学3年の冬、どうしてもリツが気になって1度だけSCに見に行ったことがある。
観覧席からリツの泳ぎを見ていたけど、そこからでも分かるほどリツの泳ぎは苦しそうだった。
掴めない何かを、必死になって探しているような、もがいているような泳ぎだった。
私が好きだったあの純粋で豪快な泳ぎはどこに行ってしまったのだろう。
あんなの、リツらしくない、と心の中で叫んだ。
見ているこっちが苦しくなり、リツの泳ぎからは目を背むけるようになった。