溢れる想いを青に込めて。
でも、ある時に見た彼のバックがあまりにも綺麗で心を奪われ、自分もこんな泳ぎをしたいと強く思った。
それから、ブレを捨ててまでしてバックを教えて欲しいと何度も頼み、渋々承知してくれた彼に2年ほど泳ぎを教わった。
その彼がゆうちゃんだった。
ゆうちゃんは6年の夏に波雲SCに移ってしまっていたし、容姿もとてつもなくイケメンになっているから気づかなかった。
4年前とはいえ、私のバックの原点のような人を忘れるなんて。
我ながら恥ずかしい、と顔を赤くしていると、ゆうちゃんが
「ところで、叶波」
と、真剣な眼差しで私を見つめた。
「水泳はもうやってないの?今日、海晴との合同って聞いて楽しみにしてたのに」
「ゆうちゃん、、」
ゆうちゃんは私が水泳をやめたことを知らなかった。
だから、こうして直接聞くのは当たり前のこと。
でも、いざ「水泳はやっていない」という言葉を目の前で言われると胸がちくちくと痛む。
「うん。もう水泳は、、やれない」
振り絞った声でそう言うと、ゆうちゃんは一瞬目を見開き悲しそうに眉毛を下げた。
「楠!始まるぞー」
その声とともに、こちらに誰かが駆け寄ってきた。
「ああ、晶。今行くよ」
ゆうちゃんに晶と呼ばれたその人は、きっと一瀬の水泳部員だろう。
「じゃあ、またね。叶波」
「うん、、」
ゆうちゃんに届いたか分からないくらいか細い声で返事をした。
未だに、心は動揺していた。
ゆうちゃんに泳ぎを教わっていたあの頃、
「もっと速く泳ぎたい。
そんで、世界に飛び込んでみたい。」