王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
着慣れたデニムとカットソーに着替えた私は、やってきたエレベーターにそのまま足を運んだ。
開放感のあるシースルーエレベーターからは、セレブ御用達の大病院や、一戸数億円超えと言われる高級レジデンスが見える。
そして、私がこれから向かおうとしているショッピングモールは、薄暗くなった外の景色の中で、上品にライトアップされていた。
この辺り一帯は旧漆鷲(ウルワシ)財閥が所有する、複合施設『レインボーヒルズタウン』と呼ばれていた。
その中にある高層オフィスビルの、三十二階から三十四階に、漆鷲フーズは入居している。
そして、七階から四八階には他の有名企業が入居していて、高層フロアには、高級レストラン、会員制のバーやラウンジ、さらに展望台にヘリポートまで備わっているらしい。
もちろん上層階には行ったことが無いけど、この華やかな土地で仕事をしていることは、友人や家族に唯一自慢できることでもあった。