王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】

とりあえず、社長の思惑とか、好意とか、そういうの抜きで考えてみよう。


『夢を叶える手伝い』


とても魅力的な提案だ。


開発のプロフェッショナルの漆鷲社長なら、授業があるとすればお金を費やしてでも聞く価値があるものだと思うし。

もちろん忙しい社長がそんな講演会なんて開く余裕なんて無いし、今の話しは夢のようなものだ。


ひとつ、気になる点があるとすれば、

毎年この4月頭から6月の末までの3ヶ月間、私は仕事以外、ほとんどコンペのプレゼンを練る時間として使っている。

仕事から帰っても、あらゆる雑誌や販売状況などの調査。

休日は実際に街を歩いて見て回ったり、購入したり、美味しいと言われるレストランなどに入り食事したり。

まさに仕事一色の生活。

たぶん、コンペに応募する人は大半は同じようなスタイルだ。

今日だって、この食事がなければ帰ってボロアパートの部屋でパソコンや雑誌とにらめっこしていたと思う。


でも、今の社長の話だと――

社長からの提案を受けたとしても、一緒にいる間に、開発のノウハウや私が作ったコンペのプレゼン資料を見てくれるってわけで。

お願いというわりには、私には一切のマイナスポイントが見えず、なんの為の提案なのか、意図も伝わってこない。


むしろ、多忙である社長のほうが、負担が大きすぎる。

疲れて休みたいであろう時間を、私に使おうとしているんだよね?

どうして⋯⋯
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