王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
「⋯⋯なんで、私の時間なんて欲しいんですか?」
少しだけ、言葉が震えた。
こんなこと聞くのはおかしいのはわかってる。
なのに、聞かずにはいられなくて。
「――君と一緒にいたいから⋯⋯」
間をおかず返ってきた言葉に、どくんと心臓が跳ね上がった。
穏やかな社長の眼差しが真っ直ぐ私を見ていて
同時に、オフホワイトの上質なスーツがオレンジのライトに反射してきらめいているのが目に入る。
私のほうは、動揺とか、戸惑いとか色んなものが心をぐるぐる支配して、しばらく口が開けなくて
自分の鼓動と、時計の秒針をぼんやりと聞いていた。
何を言っているのかわかるのに、脳は理解するのを拒んでるみたい。
硬直してる私の手を取った社長は、ゆっくりとこちらを覗き込む。
返事⋯⋯しないと。