王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
『深く考えなくていい』
社長は純粋に“一緒にいたい”と考えているだけで、私が深く考えすぎなのかな。
そういうことなら、私が自分を見失わなければいいだけのこと⋯⋯
しだいにそんなふうに考えてしまった私は、言ってしまった。
「⋯⋯わかりました。なら、その提案、お引き受けします」
観念したように言うと、社長の白い頬が上気したように染まり、ぱぁっと表情が明るくなった。
「あぁ、良かった! ありがとう来美」
「ちょ! わぁっ⋯⋯」
ぐっと腕を引かれて、広い胸に顔がぶつかるようにギュッと抱き寄せられた。
な、名前呼び⋯⋯。それにハグ⋯⋯って
「ありがとう⋯⋯」
髪に鼻先が、耳に唇が触れ、直接耳に注ぎ込まれる甘い言葉。
身体から力が抜けそう。
私の寿命は今日だけで、半分以上すり減ったに違いない。
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