王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】

「全然ボロボロなんかじゃないよ。私は美久ちゃんみたいに大した手入れしてないし、見間違いだよ」

「先輩⋯⋯女のコが肌綺麗になるのはお手入れだけじゃないんですよぉ? 愛されてるととっても潤うんですからぁ〜」

「愛⋯⋯?」

「ようは、セックスですよ。こんな多忙な時期に潤った肌してるので⋯⋯誰かとしたのかな?とおもいまして」

「せっ?!⋯⋯ちょっとなに言ってるの⋯⋯!」


焦った私は、キョロキョロしながら人差し指を唇に当てた。

昼どきの食堂のど真ん中で口にしていい台詞ではない。

ていうかなんで私は焦ってるんだ!

せ、せ⋯⋯

なんて、するわけないし!!

そもそも社長とはキスしかー⋯⋯

ってなんで社長のこと思い出してるの!


「あれぇ? 違いますぅ? ならキス?」


ぎゃぁぁ―――!


「ぜぜ、ぜんっぜん違う。彼氏もいなければ、経験もありません」


咄嗟に開き直ってしまった。

恥ずかしい情報まで公開したくらいにして。


「そうですか?」

「⋯⋯そうです。真面眼鏡の地味女ですから。」

「先輩はとても可愛らしいですよ? 眼鏡取れば、社内イチだと思いますけどぉ?」


そんなわけないでしょ。


「またからかって⋯⋯。美来ちゃんみたいに可愛かったらどんなに良かったことか」


軽口で返すと、少しだけ間があいた。

あれ? 返ってこない。
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