王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
ふと、顔をあげると、かすかに憂いを帯びた表情の美久ちゃんがいた。
「どんなに可愛くても、片思いの相手に振り向いてもらえなきゃ、意味なんてありませんけどねぇ⋯⋯」
お箸を手にしたままぷっくりした唇を尖らせる。
こんなに自分に自信満々の美来ちゃんが⋯⋯
「片思い?」
信じられなかった。
「――そうです。でも、入社してからもうずっとなんで、慣れっこですけどぉ。今の心の支えは、漆鷲社長とジェニーズです。」
でた、漆鷲社長。
「⋯⋯でもこの前の帰り、社長の出待ちしたんですけど、会えなかったんです。あんなに目立つのに、おかしいと思いませんか?」
一瞬ギクッとなる。
まさか、黒づくめの怪しい人に変装してるなんて言えるわけないし
その頃私が殴ってました。なんて言ったら殺される。
「忙しいのかもね」
そうごまかした。