王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】

両手をあげて断りの姿勢を向けると、ふたつの碧の宝石がみるみるうちに曇ってしまい、私は言葉を止めてしまった。

子犬が『僕を捨てるの?』とでも訴えるかのような瞳。

そんな目で見られると悪いことしてる気分になる。

みるみるうちに遠慮しようと考えていた気持ちはしぼんでゆき、


「⋯⋯ありがとうございます。美味しく頂きます」


受け取ってしまった。


「――良かった」


社長は満足そうに頬を綻ばせる。


「でも――これからは気持ちで結構です」

「え⋯⋯?」


半ばお願いするように伝えると、その意味が理解出来ないと言いたげに、社長の周りに疑問符が舞う。

私は言葉を選びながら、素直な気持ちをゆっくり口を開く。


「さっきの件もそうですが⋯⋯自分ばかり良い思いするのは正直困ります。
服やアクセサリーもいただいたのは嬉しいですけど、申し訳ないですし、私もどう返していいかわからないっていうか⋯⋯」


私がモゴモゴと言葉を連ねていると、社長は顎を撫でながら視線を上に向ける。

それからほんの数秒だけ間を置くと、


「そうか。なら――」


何を納得したのか、腰に腕を回されて近づく距離。

え⋯⋯?
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