王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】

運転手さんだっているのに⋯⋯

かすかに残る理性が、自分をつなぎとめる。


「だめ⋯⋯」

「まだ足りない」


力が緩んだすきに顔を背けようとすると、再びぱっくりと食べられて、熱い舌に追いかけ回される。

その途端、何も考えられなくなった。

解かれた髪の合間に入り込む官能的な指先。

脱力した私を抱き寄せる力強い腕。

全てに包まれてしまえば、私の小さな疑問や抵抗なんて、流されてしまう。


強引なのに⋯⋯嫌じゃないなんて。

自分が信じられない。


脱力した私を抱えなおした社長は、ようやく唇を開放した。


「ごちそうさま」


熱に揺れた碧色の瞳を細め、繋いでいた糸をぺろりと舐めた。

ライフゲージはもうゼロだ。ゼロ。


し、信じられない⋯⋯

足がガクガクで使い物にならない。


そのまま力の入らない私をひょいと抱き上げた社長は、唐突に歩きだした。


ちょ、ちょっと⋯⋯ 今度はなに?!
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