王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
「おお、降ろして下さい! どこにいくんですか!」
ジタバタお姫様抱っこから降りようと試みるが、腕に力が籠り押さえつけられる。
「部屋まで送り届けるだけだよ。その足じゃ、歩けないだろうし。⋯⋯なにか期待した?」
勘違いに気づいた私がピタリと大人しくなると、漆鷲社長は意地悪そうに片方の唇を吊り上げた。
羞恥に染まり口を引き結ぶ。
くうぅ!!
か、完全にからかわれている!!
「どうもしませんー―!」
真っ赤な顔で睨みつけた。
漆鷲社長は、紳士なんかじゃない!
ただのエッチな王子様だ!!
―――――
「⋯⋯思い出しただけで疲労が⋯⋯」
「どうした? 疲れたか?」
「――!」
白衣を着た園部が後ろから覗き込んでいて、慌ててぶんぶんと首を振る。
こんな近くに誰かがいるなんて思わなかった。
昼休みが終わって、空がオレンジ色になる現在まで、私たちのグループは『研究室』で試作を重ねて商品の微調整をしていたんだった。