王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
「お疲れ様です。真島さん」
終業後、社長室にやってきた私を、無表情の島田さんが出迎えてくれた。
スキのないブラックスーツと紺のネクタイ。
セルフレームの黒縁メガネと切れ長の瞳。
ただのデニムと白シャツの自分が恥ずかしくなるくらい完璧だ。
いつもノックをする前にドアを開いてくれる島田さんは、ソファへ誘導しコーヒーを勧めてくれる。
「ありがとうございます」
「社長はそろそろ一段落つくかと思いますので、少々お待ちください。⋯⋯では、ごゆっくり」
窓際のデスクで電話中の漆鷲社長を視線で示したあと、島田さんは一礼して退室してゆく。
動作にスキな無い上、私が来るとすぐ出ていってしまう島田さん。
社長から、私のことを何て聞いているんだろう?
普通にここに出入りしているけど、社員が社長室に通うなんて、普通ではありえないことだよね。