王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
「――はっきり言うと⋯⋯これで望むのは難しい」
しばらく資料を見たあと、社長は顎先を撫でながら深く息を吐いた。
はじめは意外だったけれど。
いつもあんなに穏やかな社長は、仕事に対しては結構厳しい人だった。
自分でも気づかない点を指摘してくれたり、作成段階で迷いがあった場所なんかは容赦なくバッサリ斬られる。
この指導法には好き好きがあるだろうが、私はいいと思う。
「⋯⋯理由を聞かせてもらえますか?」
社長は、私がメモ用紙を準備するのを確認してから、手元の資料に繊細な指先を走らせる。
「⋯⋯オリジナリティに欠けるところと、完全なる守りの姿勢になっている。これでは商品化したところで売れるわけが無い。受賞したいなら、もう少し練り直した方がいい」
グサ!! グサ!!
いや、仕方ない。
⋯⋯同じようなことを園部にも言われたし。
私は一言も漏らさないように聞き入れ、必死にメモに書き留めていく。
自弱点や、至らない点というものは、なかなか自分では気づかないもの。
指摘されることで、ハッと気付かされる事は多いのだ。
そして指摘だけではなく、良いところは褒めてくれるという絶妙なアメとムチのバランス。
それは、大企業のトップに立つべき存在なのだと、何度も感じさせられた。