王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】

「なんで、か⋯⋯」


社長は思案するように言葉を止める。


「言葉にするのが難しいなぁ⋯⋯。
でも、はじめて君を見かけたのは、就任の挨拶のときだった⋯⋯」


唐突に話しはじめた横顔を見上げると、社長は夜景を見るでもなく、どこか思い出すよう視線を遠くに向けて続ける。


「挨拶する僕を一番後ろの方で見ていて、騒がしいフロアの中で一人黙々と仕事に励んでいる君が、印象的だった。」


印象的?


「私が⋯⋯?」


ついこぼれると、社長の顔がこちらを向いて、目を見て頷く。


「入社した頃の自分のように見えたんだ。おいていかれないように必死で、漆鷲の名を落とさないように切磋琢磨していたころの自分⋯⋯」


あのファイルから垣間見える本当の社長の姿。
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