王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
どういうこと?
他に何か接点あったってこと?
冷静に記憶を巡っても、社長と会った記憶はないし
フロアにいるとき遠巻きに見た事があるくらいだった。
もちろんプライベートで見かければすぐにわかる。
困惑する私を見て、社長は困ったように笑う。
「⋯⋯なんでもない。それからは君が知っての通りだよ。社員証拾ったら変質者呼ばわりされて、バッグで殴られて―――」
「うああぁ⋯⋯あの件は本当にすみません⋯⋯」
そのことだったか!
耳が痛くて話しの腰を折ろうとすると、「でも――」と大きな手が優しく頭に乗せられて遮る。
「勇ましいのかと思えば、プライベートは割と押しに弱いし。すぐに真っ赤になって、笑顔は食べたいくらい可愛いし。
君は⋯⋯僕を翻弄する天才だよ」
頭にあった指先がするするっと髪を梳いて離れていくと、最後に触れた耳が熱くなる。
たべっ、かわっ⋯⋯
「ほ、翻弄してるのは社長の方じゃ――⋯」
そう言いかけて、慌てて口を押さえた。
しまった⋯⋯と思ったけどもう遅い。