王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
その手が背中に回ると、私の頭は広い胸の中に寄せられた。
壊れ物のように抱きしめる優しい腕。
甘い花のような、この香り。
トクトク聞こえる、彼の心音。
苦しい。
熱い感情に今にも飲み込まれそうで、心が叫んでいるのがわかる。
でも。
社長に私はふさわしくない。
後二ヶ月、ただそれだけだよ。
つい身を委ねたくなる温もりから、ゆっくりと顔を上げた。
「⋯⋯授賞式、までですよ」
まるで自分に言い聞かせるように。
けれど、社長は碧色の宝石をキラキラ輝かせて、眩しそうに私を見つめる。
「それでも君が⋯⋯すきだよ」
抱きしめていた腕を巻き直して、より一層深く求めてきた。
温かいのに、切ない言葉
ギュウギュウと胸がしめつけられる。
自分の心が今どこにあって、どこに向かっているのかわからなくなっていた。
―――――――