王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
もしかして。
いやまさか。
そんな思考を繰り返しながらゆっくり近づいていくと、指の隙間から、涙に濡れた宝石のような瞳が私のを切なそうに見上げた。
「あ、あの⋯⋯」
おそるおそる声をかけると、
「⋯⋯真島さん、だよね。これ落ちてたよ」
そう言って、彼の手に握られていたもの見て、頭に槍が降ってきたような衝撃をうけた。
社員証
漆鷲フーズ 株式会社
商品開発チーム 真島 来美
う、嘘⋯⋯。
私の手から、ぐしゃぐしゃになった本橋屋の袋がズルっとすべり落ちていったのだった。
―─どうやら私は自社の社長を、殴り飛ばしてしまったようだ。