王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】

ようやく帰国の連絡が入ってきたのは、そんな生活を二週間ほど送ったころだった。


「なんですかぁ〜真島先輩? 彼氏さんから連絡ですかぁ?」


昼休み。

節約弁当を目の前にスマホとにらめっこしていたら、トレーを持った美来ちゃんが悪戯に笑いながら対面に座った。

ササッとスマホをスーツの胸ポケットにしまいながら、慌ててお弁当を広げて、私は取り繕う。


「か、彼氏なんていないよ。弟から連絡が来てただけ」

「本当ですかぁ? 弟さんじゃぁ今みたいにニヤニヤしないと思うんですけどぉ」

「にっ⋯?!⋯⋯そんな顔してないよ」


と言っても、先日の飲み会で帰してもらった美来ちゃんに隠すには限界がある。

異様にニコニコして疑わしい視線を向けてくるのは、あれ以来毎日のこと。

おなじみのサラダうどん定食を上品に手を付けながら、「そろそろ白状しましょうよ」なんて言ってるけど、私は弁当に夢中になるふりをして、そちらを見ないようにした。


だって、付き合っているわけじゃないのは本当だし、何をどう言ったらわからないし。

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