王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】

「なぜ私を指名したんですか?」


純粋に疑問を持って尋ねると、松田主任は「はぁ? 何言ってんの?」みたいな顔をする。


「決まってるじゃないのよ。しっかり仕事をしてくれるからよ」

「え⋯⋯」


当たり前のように言いながら、細かく数字が書かれた紙の束を私の腕に押し付ける。


「私ね、人を見る目はあるのよ」

「あ、ありがとうございます!」


落とさないように受け取りつつ、認めてもらえるという喜びを噛み締めた。

ウキウキしながら、パソコンを立ち上げて白衣を腕まくりしてやる気満々だ。

ものすごくデーター数は多いけど、チーム内で情報処理を任されることの多い私には、朝飯前のこと。


「――それ、悪いけど、急ぎだから早めに処理お願いね。」

「わかりました」

「私は、向こうでデーター取ってくるから」

「はい。終わったらそちらに行きます」


キーボードを叩きながら返事をすると、

「はぁ⋯⋯あいつらが仲良く合コン行ってノロにかかったせいでー⋯⋯」

という松田主任の嘆きが聞こえてきた。

私は心の中で同情ししつつ、その言葉を最後に、集中するため周りをシャットダウンした。

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