王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】

『えいちゃん』


瞬時にわかった。

そう思われる相手なんて、一人しかいない。

二週間ほど前にアメリカに旅立った、美しい彼の顔がポンと脳裏に浮かんできた私は、

サーっと血の気が引いていく。


なんで⋯⋯松田主任はそう思ったの?


私のそんな表情を見て、主任はニヤニヤと悪い笑みを浮かべた。


「漆鷲永斗。入社当時から海外に行くまで、うちのグループにいた私の部下だったのよ。この前、残業帰りに、二人で歩いてるのを見かけたの。なんだか真っ黒な格好してたけど、長い付き合いだからすぐにわかったわ」


おそらくエレベーターホールで、社長と会ったときだ。

うまい誤魔化しを思いつかない私は、ゔっと黙り込んでしまい、主任はそれを見て呆れたようにクスッと、笑みをこぼした。
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