王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】

「その代わり俺が授賞したら――その眼鏡はやめろ」


信じられないことを言い出した。

一変、冗談なのかと思ったけど、レンズ越しに交わる視線は大真面目。

言い直すこともなく、私の出方を伺っている。

⋯⋯なんでそんなこと言うの?


「⋯⋯やっぱりやらない」

「逃げんなよ」


ぴしゃりと言われて口籠る。


「一回受けたんだから、棄権は無しだ」

「私がどんな眼鏡つけようと、園部に関係ないじゃん」

「⋯⋯ねぇけど⋯⋯気に食わねぇ」


まっすぐ伸びてきた骨ばった手が、眼鏡の側面に触れてなぞる。

いつもより近い、日焼けした端正な顔。

思わず身体を引くと、園部は一瞬だけ視線を伏せて離れてゆく


「覚えとけよ、真島。四日後の授賞式、楽しみだな」


ばたん!と閉まる扉。

白衣のポケットに手を突っ込んだ園部は、悪役のような台詞を吐き捨ててすぐさま部屋を出ていった。
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